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三度の飯より魚介好き

旬と食文化を考える日本魚類狂会のブログ

築地・豊洲 誰が市場を殺すのか

BS朝日の「ザ・ドキュメンタリー『築地・豊洲、誰が市場を殺すのか』」を観ました。

時系列的にも整理されており、非常に解りやすいと同時に、市場を取り巻く諸問題をクッキリと浮かび上がらせる、見応えのある番組でした。

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【写真】番組websiteより

www.bs-asahi.co.jp

要約しますと、内容は以下のとおりです。

 

豊洲の問題

  • 1956年から22年間に渡り都市ガスを製造していた工場の跡地である豊洲は、そもそもベンゼンなどの有害物質発生の可能性が極めて高い土地だったこと
  • 既設の大きな2つの道路を前提に、卸棟、仲卸棟、青果棟の3施設が分離レイアウトされていること
  • 本来盛土されているべき箇所に地下空間が拡がり、ターレ(ターレットトラック)やフォークリフトの荷重を支えられない危惧があること
  • 運搬車の動線が整理されていない、ヘアピンカーブがあるなど交通上の安全が担保出来ない危惧があること
  • その他、トラックの積み下ろし場の不足、仲卸店舗横幅の狭隘など

 

これらの根本原因は、「2016年のオリンピック立候補」と番組は言います。

  1. 移転後の築地市場跡地に、五輪用メディアセンターを作る青写真があった
  2. 豊洲移転が既定路線化し、検討や工期の圧縮が不可欠となった
  3. 市場機能面の効率検討や安全の検証に、十分な時間をかけられなくなった
  4. リオが当選し東京が落選した後も、この歪んで杜撰な計画は見直されなかった

 

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築地の問題

82年使い続けて、設備の老朽化が看過できないレベルに達していること、具体的には

  • カラスやネズミの大量発生など、衛生面での問題
  • 石原前知事時代から10年以上床の定期補修をやっていないなど、安全面での問題

 

しかし番組は、もう一つ驚くべき事実を提示します。水産物扱い量がピークに達した1986年に計画され、91年に着手された改修工事が、理由・責任が曖昧なまま5年後に中止され、問題が放置された、というのです。

このプロジェクトが完遂されていたら、豊洲移転狂騒曲は生まれなかった筈です。

 

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市場の移転問題は、食の流通に関する課題そのもの

ここからは、私見です。

築地市場の移転問題は、健全な議論や検討可能なタイミングを逸してしまったことで、もはや「C物件」と「D物件」の究極の選択問題と化してしまった感があります。

老朽化により、安全維持コストもバカにならない築地に見切りをつけることは仕方ないと100歩譲ったとしても、移転先がここまで問題を孕んだ豊洲以外になかったのか、一般都民は釈然としない気持ちです。

(但し、40ha超の纏まった土地は都内では臨海部以外には確保できず、時間をかけて探した結果「豊洲以外には候補地なし」の可能性も高いとは思われます。)

 

私は、科学的に「安全だ」とした専門家の意見を軽視し、百条委員会に石原前知事を引っ張り出して悪者に仕立てまで人気を取りたがる「小池劇場」に、正直辟易としていました。

しかしこの番組を見て、石原前知事が就任早々「築地は、古くて、狭くて、危ないと思う」と感覚論で移転の既定路線を形成したことを知り、何だよどっちもどっちだな、と思い、同時に、非常に暗澹とする気持ちになりました。

 

しかし最大の問題は、「魚河岸文化」が途絶えてしまうのではないか?ということです。

 

私たちの日々の食生活と切っても切れない関係にある魚河岸文化が、途絶えず継承されること。変化することがあっても、移転を契機に、いい意味で「止揚」され、発展していくこと。これが何より大切なことです。

 

番組は、答えを提示せずに問いかけます。「誰が市場を殺したか」と。

  • 安易で直感的な決断を下し、その上、責任を取ろうとしない政治家たち
  • 移転や築地再開発によって潤うゼネコンやデベロッパー
  • 移転などできるわけないとタカをくくっていた市場関係者
  • あるいは、お上の決めることだからと、自分らの職場を積極的に守ろうとしなかった市場関係者
  • 豊洲に行ったら買わない、という、築地の仲卸で魚を買う顧客たち
  • あるいは、実は風評が大好きな、選択肢の多い飽食の消費者
  • そもそも市場を必要としない「市場外流通」の拡大の流れ

 

考えれば考える程、食の流通の根本に関わる課題です。

今後とも、この課題を考えつづけ、移転問題の行方にも注視したいと思います。