三度の飯より魚介好き

旬と日本人の食文化を考える

安くて旨いマイワシは鮮度が命 魚屋を評価する物差しでもある

マイワシはイワシの仲間の代表選手で、主に加工材料となるカタクチイワシやウルメイワシなどに比べ、鮮魚として店頭に並ぶ機会が多いです。足の速い魚ですので、この魚が鮮度よく扱われているかどうかを見れば、魚屋や飲食店の良し悪しがテキメンに判ります。

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近海に大群で棲息

ニシン目ニシン亜目ニシン科マイワシ属のマイワシは、ナナツボシと呼ばれる所以の黒い斑点が並んでいるので、他のイワシと見分けがつきます。背は黒に近い紺色で、腹は銀色に光っています。

近海の表層域に大群で棲息します。産卵は、12月の日向灘や山口海域に始まり、1~3月は九州と日本海西部、4~6月は能登近海や太平洋の東海地方沿岸、6月の青森沿岸など、日本各地で長期にわたります。

卵は球形で、直径1mm程度。水温18℃だと58時間でふ化します。植物および動物プランクトンを食べて成長し、3mm程度のふ化仔魚は、生後1年で15cm、2年で18cm、3年で20cm前後に成長し、大きいものだと25cm程になります。7~8年生きる個体もいますが、5歳以上は珍しいようです。

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5~10月が旬

マイワシは回遊しますので産地によって漁獲時期は幅があります。また、年によって時期の変動が大きいのですが、一般的には5~10月がマイワシの旬と言われています。

一般社団法人いわし普及協会が1989年にイベントを開催して「イワシの日」を10月4日と定めたらしいのですが、その時期だともう旬も終わりのですね。

 

栄養価が高くしかも安い!優れた食材

マイワシには、多価不飽和脂肪酸であるEPA、DHA、タウリン、カルシウムなどの栄養素が豊富に含まれており、成人病予防や子どもの成長にぴったりの食品です。高い魚ではないので、沢山いただきたいものです。

 

選ぶポイント

傷みやすい魚ですので、鮮度チェックが大切です。鮮度が落ちると脂やけして黄色っぽくなるので、表面に張りがあり青く艶があるものを選びましょう。エラが綺麗な鮮紅色をしているもの、目が澄んで透明感があり、まだ死後硬直状態の(柔らかくない)ものが理想です。

ついでに、脂の乗りもチェックしましょう。全体に丸みを帯びふっくらしているものを選ぶのがいいでしょう。

 

捌き方のポイント

マイワシは身が柔らかいので、手の指先を使い開くことができます。骨に沿って爪の先を滑らせていきながら、骨から身をはずします。骨には身が残らず骨だけを綺麗に取り除くことができ、小骨も身に残りません。

ある程度大きいモノは、包丁を使って大名卸しにする方法もあります。この方法は、お造りなど仕上がりを綺麗にしたい場合に向いています。大名卸しにした場合は、その後、三枚に卸し、小骨を抜く必要があります。

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旨いマイワシを様々な料理で楽しもう

脂の乗った旬のマイワシは刺身が最高ですが、その他にも酢〆、煮付け、塩焼き、揚げ物、つみれ汁などにしても旨いです。

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刺身・酢〆

鮮度が良いマイワシは、是非生食で。また、刺身にする前に、フィレの状態でさっと酢で洗うと、生臭さが消え一層旨くなります。卸したマイワシの両面に塩を振り、ラップなどで包んで冷蔵庫で30分~1時間ほど寝かせてから表面をキッチンペーパーでよく拭き取り、その後5~10分ほど酢に浸けます。

 

甘露煮

マイワシは酒、醤油、みりん、砂糖と刻んだ生姜を加えて甘辛く煮るととても旨く、小さいモノなら骨ごと食べられます。また、大きいモノでも圧力鍋を使えば、骨も柔らかくなります。

 

ムニエル

大きいマイワシは三枚に卸し、塩、胡椒などを振って酒を吹き付けて1時間ほど寝かせてから、小麦粉をまぶしてフライパンで焼き、ムニエルにすると旨いです。

 

その他調理いろいろ

個人的には、大葉と一緒にくるくる巻いてフライにしたり、すり身をつみれ汁にしたりも好みです。また加工品としては、「いわし明太」が堪りません。ああ旨そう。

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呼称は多いが出世魚とは言われない可愛そうな鰯

地方によって色々な呼び名があり、平子鰯や七つ星などとも呼ばれています。また、市場では大きさによって次のように呼ばれたりもします。

  • シラス:稚魚
  • アオコ、ヒラゴ、タツクチ、コバ、ショウバ(小羽鰯): 10cm未満
  • チュウバ(中羽鰯):15cm前後
  • オオバ(大羽鰯):18cm以上

マイワシが出世できなかった悲しい経緯については「出世魚」の記事をご覧ください。

 

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漁獲量が周期的に変動する「地球と共に生きる」鰯

イワシは、30年前までは日本で最も代表的な魚でした。漁獲量のピークだった1988年には480万t/年を記録し、当時の日本の総魚介の何と4割を占めていました。ところがその後激減し、最近では50万t/年程度で推移しています。特にマイワシの落ち込みは著しく、1988年に450万tを誇った漁獲量は、2005年には2.8万tまで減り、ピーク時の0.6%の水準になりました。

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マイワシの漁獲量が激減した原因は定かでありませんが、2016年には約40万tにまで回復しています。1965年の9千tという記録もあり、乱獲による資源枯渇、ということではなく、「生態系の体制変化(レジームシフト)により漁獲量も数十年単位で変化するらしい」ということが解ってきています。学術研究によると、日本・カリフォルニア・ペルーの3大漁場ともマイワシの漁獲量変動は50~70年周期で一致していて、「太平洋全域に共通した何らかの大規模な環境変動(アリューシャン低気圧の活動など)が資源変動の原因」との見方もあるようです。

 

【出典】農林水産省 漁業・養殖業生産統計
   (独)水産総合研究センター 中央水産研究所 マイワシの謎