三度の飯より魚介好き

旬と日本人の食文化を考える

肉食で夜行性なの梅雨イサキ 旨い魚は鍛冶屋も殺す

イサキは、初夏の代表的な魚。

「梅雨イサキ」は非常に旨いのですが、水温が下がる秋から春は、まるで別の魚のように味が落ちます。これほど旬がはっきりした魚も珍しいです。

f:id:souxouquit:20160718184638j:plain

肉食で、夜行性で、鍛冶屋殺し

イサキ(伊佐木、伊佐幾、鶏魚)は、スズキ目 イサキ科 コショウダイ亜科 イサキ属に属します。

「イサキ」という標準和名は、礒に棲む「磯魚」(イソキ)、幼魚の縞に因んだ「班魚」(イサキ)に由来すると言われます。「伊佐木」「伊佐幾」は当て字です。また、背鰭がニワトリの鶏冠(とさか)に似ていることから、「鶏魚」とも書かれます。

地方では、様々な名で呼ばれています。オクセイゴ(東北地方)、イサギ(東京)、クロブタ(神奈川)、コシタメ(静岡)、エサキ(北陸-山陰)、ウズムシ(近畿)、カジヤコロシ(南紀)、イセギ(高知)、イッサキ(九州)、ハンサコ(大分-宮崎)、ハタザコ、ショフ、ジンキ(宮崎)、ソフ(鹿児島県内之浦)、クチグロマツ(奄美大島)など。

夏(6~9月)、直径0.8-0.9mmほどの分離浮性卵を産卵します。1匹のメスの産卵数は、百万粒を超えます。卵は海中を漂いながら1日程で孵化し、稚魚は浅い海岸でプランクトンを捕食しながら成長し、その後、海藻が多い岩礁域の深みに移り、群れを作って生活します。

夜行性で、昼は水深50m程度の深みに潜んでいますが、夜になると海面近くで餌をとります。小魚・甲殻類・多毛類などを捕食する肉食性です。

幼魚は体の上半分に黄色の縦縞が3本あり、この模様がイノシシの子に似ていることから、ウリボウ、イノコなどとも呼ばれます。成長するにつれこの縦縞は薄れますが、成魚でも春夏には縦縞が出現します。

4年ほどで成熟し、全長は40~45cmに達します。体型はやや前後に細長い紡錘形。体表は細かい鱗が密集し、ザラザラしています。非常に硬い骨が特徴で、「鍛冶屋殺し」の異名は、かつて骨が喉にひっかかった鍛冶屋が死んだ逸話から。

旬は初夏で、この頃のイサキを「梅雨イサキ」とか「麦わらイサキ」とも呼びます。

f:id:souxouquit:20170523210800j:plain

漁獲量は安定的に推移

イサキは、本州中部以南の暖流の影響のある沿岸、太平洋側では関東から九州南東部にかけて、日本海側では北陸から九州北西部にかけて多く見られ、全国で年間4~5千t程漁獲されています。

漁法は、釣り、定置網、刺し網など。少ないながら、養殖モノも市場には出回っています。

漁獲量は、多い順に、長崎、福岡、山口となっていて、この上位3県で47%のシェアを占めます。

(【出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」 2016年12月27日発表】)

 

ブランドイサキもあり升

値賀咲(ちかさき) 長崎いさき | 長崎県

長崎県の五島列島北部、宇久島・小値賀島周辺で獲られた瀬付きのイサキで、一匹一匹撒き餌を使わずに手釣りし、丁寧に活け〆を行うなど、品質には細心の注意が払われます。

 

紀州いさぎ 和歌山南漁業協同組合

潮流れの速い紀州灘で獲られたイサキで、手釣りにより漁獲され、活かしたまま田辺漁港に持ち帰り、水揚げ直前に1尾1尾活け締めされ、高鮮度で出荷されます。

 

f:id:souxouquit:20170523210751j:plain

腹に張りのある大きな個体を選ぼう

イサキは目が濁り易く、鮮度の判断基準になりません。全体に色艶がよく、腹を触った時に張りがある物を選びます。また、エラブタを持ち上げてみて、エラが鮮やかな鮮紅色のものが新鮮です。

200〜300gが中心的なサイズですが、400g超の個体は特に旨いとされています。全体にずんぐり丸みを帯びたものを選び、痩せた感じのものは選ばないのがポイントです。

捌き方は、以下のサイトを参考にするといいでしょう!

イサキ/鶏魚/伊佐木のさばき方 三枚におろす:旬の魚介百科

0822kiseki.com

 

f:id:souxouquit:20170529175544j:plain

刺身と塩焼きが基本だが、他にもいろいろ旨い

白身ですが脂肪が多く、旨みのある魚です。DHA、IPAなどの脂肪酸、脂溶性ビタミンであるビタミンA、ビタミンD、ビタミンEを豊富に含有しています。

刺身と塩焼きが基本ですが、いろいろ旨い料理バリエーションがあります。

 

刺身

鮮度が良いものは是非刺身で。甘い脂が身に均質に行き届いていて、ほどよい軟らかさと旨みが舌にからみつきます。他の青魚にも白身魚にもない、独特の風味が旨いです。血合いの赤さも美しい!

また、皮と身の間に旨みがあるので、皮霜造りや焼霜造りもお勧めです。夏場はカルパッチョもいいですよね。

f:id:souxouquit:20170523210745j:plain

焼き物

単純な塩焼きこそイサキ!という感じです。

大振りなモノは切り身で、小振りなモノは尾頭つきで。水洗いして、振り塩をして、1時間以上寝かせて、じっくりと焼き上げましょう。身が硬く締まらず身離れもよく、独特の風味と甘味があり、堪りません。

 

ポアレ

フレンチやイタリアンでポアレにされることも多い魚です。皮付きの切り身に塩コショウし、皮目のおいしさを生かして、カリッと焼き上げるのがポイントです。甘味があって、実に上品な味わいです。

 

煮つけ

煮つけは、魚を余すところなく利用できる優れた料理法です。ご飯との相性もばっちりです。関東ではあまり煮つけにはしませんが、是非試してみましょう。こってり甘辛く煮つけても、あっさりと酒、塩で味つけしても旨いです。

 

潮汁

刺身にした後のあらは、是非利用しましょう。基本、鯛と同じです。湯通しして冷水に取ったあらを洗い流し、昆布出汁で煮出して、酒、塩で味つけします。

 

皮のサラダ

皮も捨てずに利用しましょう。鱗がついたまま素揚げにして、それをサラダにトッピングするだけで、磯の香りの旨いサラダが楽しめます。カリカリベーコンより100倍お洒落で旨いです(当社比)。

 

白子煮

実は、旬のイサキの白子は、煮ても、焼いても、ソテーしても、絶品に旨いのです。煮つけるのなら、酒、みりん、砂糖、醤油などを好みの配合で。

 

その他

香辛野菜や味噌と合わせた「なめろう」、氷水で溶いた味噌と合せる「水なます」、なめろうを焼いた「さんが焼き」なども旨いです。夏場の食欲不振時にも、もってこいのメニューです。