三度の飯より魚介好き

旬と日本人の食文化を考える

富山湾の宝石、春の訪れを告げるシラエビ

「富山湾の宝石」とも呼ばれるシラエビは、4月1日に漁が解禁されることから、春の訪れを告げる味覚として人気が高い海老です。

シラエビ(白海老、Pasiphaea japonica)とは、種小名"japonica"の示すとおり日本沿岸の固有種で、エビ上目十脚目抱卵亜目コエビ下目オキエビ科シラエビ属の小さなエビです。

富山や能登の地元では「シロエビ」の名で呼ばれ、他にもヒラタエビ、ベッコウエビなどとも呼ばれます。

実は、標準和名の「シロエビ」はクルマエビ科アカエビ属で、別の種です。また地域によっては、浅海で漁獲されるヨシエビ属諸種、スジエビ類、シラタエビなど、これまた別の種を「シラエビ」と称するところもあります。

全く紛らわしいのです。

f:id:souxouquit:20170501214923j:plain

透きとおった淡いピンクの宝石

サクラエビによく似ていますが、サクラエビはメスが受精卵を海中に放つ根鰓亜目(クルマエビ亜目)なのに対し、シラエビはメスが卵を抱える抱卵亜目(エビ亜目)に属します。

産卵期は7~11月。ふ化した幼生は体長が5ミリ程度で海中を浮遊し、プランクトンを食べて成長します。サクラエビよりも大きく体長50-80mmほどまで成長し、やや左右に平たい体型をしています。

透きとおった淡いピンク色をしているためその美しさから「富山湾の宝石」といわれますが、死ぬと白く濁るため、シラエビの名がつきました。

サクラエビ同様、深海に生息します。群れを作り遊泳しますが、昼間は水深150~300mの深海に生息し、夜は水深100m以浅まで上昇する「日周鉛直移動」を行うことが知られています。

一般に、海老類の寿命は、アマエビは10年、伊勢海老は30年と長いのですが、シラエビの寿命はクルマエビなどと同様短く、2~3年です。

 

富山でしか漁獲されない希少な海老

商業漁獲が行われるのは、世界中で富山湾のみです。遠州灘、駿河湾、相模湾など太平洋側でも生息が確認されていますが、十分な水揚げ量が確保できず、商業漁獲は行われていません。

年間の漁獲量は400~500t程度。富山湾の中でも水揚されるのは射水市新湊漁港と富山市岩瀬漁港の2港のみです。

漁場は神通川沖や庄川沖の藍瓶(あいがめ)と呼ばれる海底谷。小型底曳網による「かけ回し漁法」で漁獲されています。

1996年に「富山県のさかな」として、ブリ、ホタルイカと並んで指定されました。

 

4月に解禁される漁は11月まで

限られた資源を持続的に利用するため、富山では漁期を4月1日から11月までと定めています。漁は6~7月が最盛期です。

www.news24.jp

数奇な運命を辿ったシラエビの歴史

体が小さいシラエビは、カラを剥くのに手間がかかるため、鮮度保持が昔から課題でした。以前は鮮度の落ちる前に煮干しにするか、それに食紅で色をつけて「サクラエビの代用品」にしていました。つまり、大量に獲れるものの利用の仕方は非常に限定的でした。

ところが近年、一旦冷凍することでカラが剥きやすくなることがわかると、生食の食材として見直され始めました。

地元の水産加工業者が最新の冷凍技術を導入してカラを剥いたところ、中から現れた白い身は、水揚げ直後よりも旨みが増していました。とろりとした舌ざわりに、コクのある上品な甘さ。この剥き身の旨さが受け入れられ、シラエビの存在は広く知れ渡るようになりました。

こうして、以前は富山県周辺でしか手に入らなかったシラエビは、新鮮なうちに急速冷凍され、流通網の発達も手伝って、年間を通して日本中の市場へ安定供給されるようになりました。

 

淡いピンクの秘密はアスタキサンチン

エビはタウリンを多く含み、脂肪分が少なく良質蛋白質の比率が高いヘルシーな食材です。また、強い抗酸化力で発がんを抑制し血液をサラサラにする「アスタキサンチン」と呼ばれる、茹でると赤くなる色素成分を多く含みます。

殻にはキチンという不溶性食物繊維が含まれており、便秘の予防・改善に役立つだけでなく、大腸がんの予防やコレステロールを体外に排出するはたらきがあります。

また、殻ごと食べると、カルシウムやマグネシウム、リンなどを豊富に摂取できます。

 

鮮度のポイント

冷凍モノは、解凍される前のものを買い求めた方がいいでしょう。もし冷凍していない生が手に入るのなら、なるべく透明感があり、ピンクの色が残っている物を選ぶのがポイントです。

 

料理

f:id:souxouquit:20170501214922j:plain

刺身

とろりとした食感と独特の上品な甘さを一番味わえるのは、何といっても刺身です。シラエビの頭から取ったオイルに天然塩とレモンをプラスしたタレでいただくと、繊細な旨さが際立ちます。

また、鮨だねとして軍艦巻きなども、これぞ富山という味わいです。

 

昆布締め

薄板の羅臼昆布にて魚介を挟んで締める昆布締めは、富山の郷土料理です。シラエビの上品な味と昆布の旨みが相まって、酒の肴に最高です。

 

汁もの

白身魚のすり身団子や蟹のしんじょうを種に、シラエビから摂った出汁でいただく碗。絶品です。素麺の出汁として暖かいにゅうめんでいただくのも、旨いです。

 

唐揚げやかき揚げ

殻付きのまま揚げたり焼いたりすると、香ばしさが生まれ風味がアップします。唐揚げやかき揚げは、富山では定番料理です。シラエビの甘さがさらに引き立てられる一品です。

f:id:souxouquit:20170501214921j:plain

炒め物

釜揚げにされたものを炒め物に加えると旨いです

 

卵とじ

笹掻き牛蒡をあわせて卵でとじた柳川鍋。春には筍などと、季節の具を加えます。

f:id:souxouquit:20160501134118j:plain

洋食や中華

和食のイメージが強いシラエビですが、コロッケなどもいけます。姿のままやすり身をクリームソースで包みます。また、サクラエビ同様いい出汁が出ますので、中華の味付けにも適します。ラーメンはご当地グルメらしいです。

いかがでしょう。
シラエビで、春と、富山湾の味を満喫してみるのも素敵ですね。