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三度の飯より魚介好き

旬と食文化を考える日本魚類狂会のブログ

お目出鯛ぞ! 魚の王様マダイ

七福神のえびす様が小脇に抱えているのは鯛。大相撲の優勝力士の手にも鯛。

おめでタイ時には必ず鯛が出てきます。

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コリコリした歯ごたえの引き締まった身、そして適度な脂の乗り。また、タンパク質、タウリン、EPA、DHA、ビタミンB1、内臓部分にはビタミンB2などが多く含まれます。

赤く立派な見た目と、旨み。マダイが「魚の王様」と称される所以です。

 

マダイの旬

マダイは5月中旬に産卵を終えますが、その後は痩せ、味が落ちます。俗に「麦藁鯛」と呼ばれる晩夏~秋の鯛が敬遠されるのは、そういう理由です。

それに対し、「桜鯛」と呼ばれる春(3~4月)が旬とされていますが、これは、産卵するためにマダイがのぼってきて網にいちばんかかる春の時期を “旬”とすると商売上都合がいい、ということであり、マダイの本当の旬は、もう少し寒い時期(1~2月頃)とも言われます。

ただ当然マダイにも個体差があるので、いい個体を選べる(母数が大きい)時期が旬、というのも、あながち嘘ではありません。

マダイは「目の下一尺」と言われ、全長40㎝くらい、2㎏弱~3㎏くらいの肥満した中型が、最も旨いとされています。

大きくなりすぎると、筋があり、脂身が少なくて身が硬かったり、旨くありません。釣果としての大鯛は嬉しいが味はそうでもない、ということのようです。

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しかし、それも全て天然モノを前提としたハナシで、養殖モノには基本的に旬はありませんし、年間を通し安定供給されています。

天然モノと養殖モノ

マダイは、年間64千tも養殖されています。これは市場に出回っているマダイの、実に81%にあたります。生産量の多い順に、愛媛県、熊本県、三重県となっており、愛媛では柑橘類を飼料に混ぜた「愛鯛」、熊本では「みやび鯛」などのブランド鯛もあります。

それに対し天然モノは、年間15千t漁獲されており、多い順に、長崎県、福岡県、山口県となっています。

買う時に県を意識すると、天然モノと養殖モノを見分けられると思います。

(【出典:農林水産省「漁業・養殖業生産統計」 2016年12月27日発表】)

 

さて気になるのは、天然モノと養殖モノ、どれだけ違うのか、ということ。

最高に旨いマダイは、天然の、しかも丁寧に後処理(後述)が施されて流通する「ブランド鯛」の中に含まれる、ということについては、おそらく異論はないと思います。しかし、こういう持って回った言い方をしたのには理由があって、天然モノは個体差が非常に大きく、一概に「天然モノ=最高」とは言えない事情があるからです。

ブランド鯛でも、いいものは仲買に競り落とされ高級料理店に卸されますので、スーパーに並んでいるのは2級モノ、ということになります。ブランドでなければ後処理が適切でない場合も多く、一般にブランド鯛の安物より劣り、中には酷いモノもあります。

一方の養殖も、いいものはやはり仲買に競り落とされてスーパーに並ぶのは2級もの、ということになりますが、天然モノ程の個体差がないので、平均すると間違いが少ない、ということにもなるかもしれません。

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個人的には、天然vs.養殖という二極対立に拘るより、キチンと後処理しているのか、という点の方が、よほど大事だと思います。

マダイの捌き方

水揚げ直後の釣りたてを旨いと表現している食レポをTVなどでもみますが、食感がプリプリしていることと雰囲気だけで、実は旨くはないのです。

どんなに旬の魚でも、1~2日は生簀で泳がして身を締めます。そして元気なうちに、目の上あたりにある「ツボ」からピアノ線などを差し込み神経筋を抜く、いわゆる「神経絞め(神経抜き)」を施します。これにより、神経のない魚体は自分が死んだ事がわからず、死後硬直までの時間を遅らせることができるのです。その後すぐに血抜きをし、全身が硬直しない半日ぐらいの間に捌きます。

この一連の後処理で、鮮度保持に大きな差がでます。例え天然モノでもその後の「仕事」が雑だと素材の良さが台無しになる(前述)ことの所以です。

更に、〆て刺身にするまでに数時間~半日程度時間をあけると、イノシン酸が高くなり旨みが増します。また、湿度100%の業務用氷温庫を使って1週間程熟成させると、身が飴色になり、格段に旨みが増します。

買ってきてからの処理も大切です。切れない安物の包丁は切り口の細胞を押しつぶしてしまい、食感も旨みも損ないます。切れ味のいい包丁で調理すれば、安いタイでも旨い刺身はできます。また、家庭用冷蔵庫でも高度な氷温機能があれば、熟成により旨くすることも可能です。

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調理法

 

鯛の食べ方は色々。お造り、昆布じめ、煮付、酒蒸し、湯豆腐、鯛めし、味噌漬け、粕漬けなど。もちろんどれも旨いです。

 

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塩焼き

シンプルな塩焼きが一番旨い、という意見もあります。調味料は塩だけ。大根おろしや醤油すら要りません。

しかも冷めても旨いのです。お祝い事などにマダイの塩焼きが欠かせないのは、見た目の派手さもさることながら、冷めてもなお保たれる王様の味によるものだろうと思います。

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潮汁

昆布と一緒に煮て、塩と醤油で味付けするだけのシンプルな料理。ただ、下処理や火の入れ方に、少々コツがあります。

  • 刺身同様新鮮なアラを使う(鮮度の悪いモノは味噌汁にした方が無難)
  • 水洗いしたアラに塩を振り30分程度水出しする(この過程で臭みを抜く)
  • 霜降り(沸騰した湯に数秒浸し表面だけに火を入れる)にする
  • ごく弱火でアクを取りながら煮る

などです。

アラから出る出汁は、絶品です。捨てることなく、マダイの旨さを味わい尽くしたいものですよね。

さて、めっきり春らしくなった今日この頃。天然マダイの刺身で一杯飲りますか。
ビールはもちろんあの銘柄で!

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