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三度の飯より魚介好き

旬と食文化を考える日本魚類狂会のブログ

特別天然記念物! 身投げするホタルイカ

晩春の季語にもなっているホタルイカは、春の味覚としても魅力的な食材です。

和名も「蛍烏賊」ですが、英名も「firefly squid」といいます。

発光のメカニズムは未だ解明されていないようですが、神秘的に光るこの小さな一年魚を、人々は洋の東西を問わず昔から愛でていました。

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身投げするホタルイカの大群は特別天然記念物

世界には、40種類ほどのホタルイカの仲間が確認されています。日本近海では、鳥取県、兵庫県、京都府、福井県、富山県など日本海全域、特に兵庫県と富山県で多く水揚げされます。相模湾、駿河湾、外房など一部の太平洋岸でも揚がりますが、量は多くありません。

ホタルイカは、日中は水深200~600mの深海に生息していますが、夜になると海面近くまで浮上します。産卵するのは、春から初夏までの新月の夜。海岸近くまで数百万匹ものホタルイカが押し寄せ、闇夜に光り輝く光景は、実に幻想的です。そして、産卵後ホタルイカが浅瀬に打ち上げられ一斉に発光する現象を、地元では「身投げ」と呼びます。

特に、富山湾の常願寺川河口から魚津市にかけて約15km、沖合約1.3kmの海面は、1952年「ホタルイカ群遊海面」として国の特別天然記念物に指定されました。ちなみに、指定を「ホタルイカ」とすると食用にできないので「群遊海面」を付けたのだとか。

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富山県滑川市には、ホタルイカの魅力を紹介するほたるいかミュージアムがあります。地元の方も認めるお勧めスポットのようです。

海上からホタルイカ漁や発光現象を見学できるほたるいか海上観光というのもありますが、残念ながら2017年は中止だそうです。

また、ホタルイカ掬いというのもできるようです。これは面白そう! 船がダメなら自分で掬っちゃえ。

 

漁法

漁期は2~5月頃です。

富山湾のホタルイカは、マント網式の定置網で漁獲されます。魚体が傷つきにくい定置網によるホタルイカ漁は、全国でも富山だけです。

兵庫県(山陰沖)での底引き網漁は1984年に開始されました。深さ200m程度の深海を回遊している個体を捕獲します。兵庫県の捕獲量が富山県より多いことは、あまり知られていません。中でも浜坂港は漁獲量全国トップクラスの水揚げを誇り、地元も浜坂みなと ほたるいか祭りなどでPRしています。

通常ボイル状態で流通するホタルイカですが、浜坂港の「浜ほたる」は、船上でナイロンチューブ詰めし、鮮度が保たれた生の状態で出荷されます。また、陸揚げ後すぐに流通させることによって通常よりも早く店頭に並ぶため、家庭で簡単に茹でたての浜の味が楽しめます。

ホタルイカの食べ方いろいろ

選び方

ボイルは、膨らみがあって表面につやのあるもの、生イカは、透明感のあるものを選ぶとよいでしょう。火を通しても身は固くならず、程よい甘みがあります。また、ワタは絶品です。

背骨はともかく、目玉は下処理の段階で取っておくことをお勧めします。

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刺身

ボイルしてあるのを買った場合はそのまま、生で買ったモノは、一度ボイルします。酢味噌和えなどでいただきます。

 

竜宮そうめん

ゲソ(足)を生のまま、ショウガ醤油でいただきます。生食に危険なワタ(後述)は除きます。

 

しゃぶ

生で買ったモノは、しゃぶができます。昆布で出汁を取った鍋を沸騰させ、30秒~2分くらいくぐらせます。湯豆腐などと一緒にポン酢でいただきます。とろける旨みで、幸せの絶頂に昇ります

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沖漬け、黒作り(醤油漬け)、塩辛など

ホタルイカの漬けには旨み成分が多く含まれており、酒の肴に最高です。また、暖かいご飯に載せてもとても旨いです。

 

炒め物

加熱することでワタの旨みが濃厚になります。スパゲティの具、中華の炒め物などにいいです。

 

揚げ物

天ぷら、から揚げ、フライにしても美味しく食べられます。実はアヒージョもイケます。油で加熱すると、突然お腹が破裂したりしますので、十分注意してください!

 

その他

シンプルにお米と一緒に炊いてしまうのが、究極の一品かもしれません。菜の花などの春の野菜と和えたりしても、季節を感じるメニューが出来上がります。マリネやサラダの一部としても旨いです。また、串焼きにしてもイケます。

 

ホタルイカは、そのまま食べる以外にも色々な料理に使えますので、是非試してみてください。

 

生食には留意すべし!

従来、腐敗が速いホタルイカは地産地消でしたが、冷蔵技術や高速輸送手段の発達で、最近は消費地が飛躍的に拡大しました。地元の人たちはホタルイカを決して生で食べませんでしたが、そういった知恵が、遠隔の消費地に共有されない状況が起こってきました。

一方、グルメまんが「美味しんぼ」が、ホタルイカの踊り食いを1992年に絶賛しました。それ以来現在に至るまで「生食用」を謳った品が魚屋さんの店頭に並ぶようになり、また、踊り食いを「売り」にした料理店が存在しますが、果たして生食は安全なのでしょうか。

 

まず事実として、ホタルイカには旋尾線虫の幼虫が寄生しています。寄生率は7%程度との測定結果もあり(出典:国立感染症研究所 感染症情報センター2000年5月発表 感染症発生動向調査 ホタルイカ生食を原因とする旋尾線虫幼虫の検出状況 )、決して無視できる割合ではありません。

旋尾線虫を体内に入れると、アニサキス症に似た「急性腹症」、あるいは皮膚下を移動する「皮膚爬行症」などをおこす恐れがあります。

こうした症状の頻発に危機感を持った厚生労働省は、以下のとおり通知しました。

【参考】厚生労働省 衛食第110号 衛乳第125号 2000年6月21日発表)

1.生食を行う場合には、次の方法によること

①-30℃で4日間以上、もしくはそれと同等の殺虫能力を有する条件で凍結すること

(同等の殺虫能力例:中心温度が-35℃で15時間以上、または-40℃で40分以上)

②内臓を除去すること

2.生食用以外の場合には、加熱処理(沸騰水に投入後30秒以上保持、もしくは中心温度で60℃以上の加熱)を行うこと

加熱や、強力な凍結処理を施したものでないと、安全とは言えません。

 

結論として、ホタルイカの生食はお勧めしません。生で食べる場合、自己責任でお願いします。